プライバシーはどこまで保護するべきなのか

今年前半は世間を賑わせるニュースがたくさんあった。佐村河内氏のゴーストライター事件、小保方晴子STAP細胞、野々村議員らネタはつきないお茶の間だったけど、私的に今年最も驚いた事件はスノーデン事件である。


アメリカのCIAとNSA等の政府機関で働いていた天才的頭脳をもつエドワード・スノーデンが、アメリカ国家の法律やモラルを無視した情報収集やスパイ活動の全貌を香港でジャーナリストを通じ暴露した事件。これまでのアメリカで起きた内部告発と比べ、情報量、質共にリアリティが凄まじく、世界に大きな問題提起をした。その後、スノーデンの暴露に協力した著名なジャーナリストにより世界24ヶ国同時刊行という形で、より詳細な暴露までの流れやスノーデンが持っている国家機密を本として発表。日本ではその名の通り「暴露」という題名で翻訳され、今年の5月に販売された。私もたまたま本屋で目が止まり、ようやく読むことができた。


http://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%89%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3


とても難解な用語が多いが、それでもスノーデンや著者がそれをできるだけ一般人にもわかりやすく纏めてくれいる。日本では考えられないようなアメリカの国家機密がたった1人の男によって全世界に露わになってしまった。


簡単な内容としては、アメリカは国家ぐるみで一般人や世界中の人間や組織の通信記録を傍受し、管理するシステムをすでに有しており、Yahoo!Facebookに代表されるネットインフラから、また国内最大手の電話会社からあらゆる通信記録を毎日収集しているという事実。特に9・11のテロ後はその方針が強まり、今や「全てを収集する」をスローガンにアメリカ政府は日々そのシステムを強固なものにしている。

9・11後にできた愛国法により、アメリカは対テロにより強固な警備ができるよう、事件に関わる可能性がある人間の通信記録を調べる事をできるようにした。しかし、実際にスノーデンが暴露した情報によるとアメリカは軍事防衛に関係の無い人間、例えば他国の資源や経済に関する情報を交換している通信や著名人のプライベートに関わる事まで傍受し、外交や政治に有利に働かせようとしている。これは明らかに対テロには関係のない話であり、日本人である私から見てもやりすぎと言わざるえない。また、オバマ大統領や高官が言うには、この通信記録の傍受が適応されるのが外国に対してのみであり、アメリカ人である限り大丈夫だと言い訳しているが、それが嘘であることもスノーデンの暴露でわかった。そもそも、外国ならばいいのかと、オバマ大統領の自己中発言にはガッカリである。


さらに、アメリカは中国のソフトウェア商品に、情報が傍受されるチップのようなものがついているとし、不買に繋がるようなキャンペーンをしながら、自国のマイクロソフト等の製品にはデリバリーの前にある場所で商品に専用のチップを付属させ、情報の傍受ができるようにしている。もちろん、自国の商品自体の売上を応援するつもりもあるだろうが、中国製品のシェアが伸びる事で傍受できる情報量が少なくなる事を恐れた。「全てを収集する」事に対し、アメリカは並々ならぬ執念を見せている。


スノーデンは今ロシアに亡命し、アメリカに危害を加えない程度にまだまだ暴露を繰り返している。一年の亡命期間が終われば、スノーデンはFBIに逮捕されることが決定的なだけに、ロシアにいる間の彼の活動には余談を許さない。


さて、私の個人的な感想としては、やはりアメリカはやりすぎだろうという怒りがまず第一だ。私のような国家の存亡になんら関係の無い一般人のプライベートがいくら国家に見られようが、何されようがそんなに気にならない。また、通信記録を徹底的に管理することでテロを未然に防げるなら構わない。しかし、実際に今回のスノーデンのような知識を持っている人間は、現状のシステムから逃れて通信する術を知っているし、アメリカがあらゆる通信記録を傍受できるかというとそれは無理だ。要はいたちごっこになるだけなのだ。それならば、今のような情報統制の方向性は間違いなのだと思う。


さらに許せないのは、アメリカは防衛の為に発展させてきたその傍受システムで得ることのできる情報を、自国の利益の為に使ってしまっている事だ。スノーデンの暴露によれば、メキシコの大統領選挙に立候補した政治家を二週間集中的に情報傍受したり、各国の代表が集まる会議でもあらかじめそれぞれの国が議題に対しどのような立ち位置をとるか把握することで議論を有利に運ぼうとしたりしている。正直、その気になればなんだってできるし、アメリカの最近の景気回復もなんかやましいことやってるんじゃないかと疑ってしまう。

さらには、アメリカは情報を傍受するだけでなく、情報を統制する技術もしゃかりきに開発している。簡単に言えば、我々が使っているパソコン等の操作を国が自由に管理できるようなシステムだ。ここまでくれば国民は国家の道具でしかなくなる。アメリカは世界制覇でも目論んでいるのだろうか。


私は自分のプライバシーなんて気にしないが、特に女性は例え相手が国家であれ、あらゆる通信記録が傍受されているなんて嫌だろう。先日のベネッセみたいに、スノーデンがもししょうもない人間なら、個人情報と言えるレベルじゃない個人の全てが漏洩してしまう可能性もある。これはアメリカ国民は怒り狂わなければならない。


第二に、アメリカのジャーナリストの質の高さに驚いた。日本ではこんな本はまず出てこないし、自分の人生を捨ててでも世界の為にと行動できるスノーデンのよいな人間もいないだろう。この本の第一章は著者がスノーデンに出会うまでから、暴露に至るまでの過程が小説のように書かれていてグイグイ引き込まれる。スノーデンの知識の凄さと覚悟の大きさ、アメリカのジャーナリスト達のスキルの高さや使命感の強さ、政府の意向をなるべく汲まないような内容をルールに基づきなるべく早く発表する各紙。日本ではとうてい想像できないようなマスコミのレベルの高さが見て取れた。日本のマスコミにもこの一冊を是非読んでほしい。


日本でも特定秘密保護法なる、情報統制に一時議論が盛り上がった。スノーデンのような国家機密を暴露するような人間を取り締まる為の法律である。これは非常に難しい、大体は人間のモラルに関することであるからだ。


私はテロや犯罪を防ぐ為の通信傍受には別に反対はしない。しかし、そのようなシステムを持てば、権利者は必ず悪用する。それを管理する他のシステムが必要になるが、実際それは難しい。司法がその役割を担うべきなのだが、アメリカも日本も司法は権力にべったりだ。

それならば、そういった情報統制は禁止し、テロは別の方法で防がなくてはならない。外交なのか、武力なのか、そちらが重要になってくる。

ホリエモンと青山敏晴がこの内容の議論で喧嘩していたが、私はどっちかというとホリエモンよりである。言い方は悪いが、こんな法律を作っても内部告発をする人はするし、スノーデンのような知識を持った人間は止められない。冤罪で捕まる人も出てくるだろう。それならば、秘密を守ろうと人に意識付けするのではなく、そもそもそんな気にさせない、知られないことが大事なわけで。スノーデンもアメリカがテロを防ぐためだけに、必要な情報だけ集めていたのならこんな内部告発はしないだろう。アメリカという国家にとことんガッカリし、自分の人生を捨てでも暴露することを決意した。私も会社の内部情報を知っているが、それを外部に出さないのは別に捕まったりクビになるのが怖いわけじゃなく、純粋に会社に迷惑かけたくないからだ。要はモラルの問題なのだ。


スノーデンは本物の勇気を持って、とんでもない巨大な組織相手に内部告発をした。この勇気を、全世界の市民が支えて、もっと大きな波を起こさなければならない。とにかく、彼の今後の行動に注目したい。