落合博満が溺愛した鉄腕

今年もプロ野球は佳境を迎えている。何と言っても今年は広島とオリックスが各リーグを盛り上げている。といっても私はそこまでプロ野球を細かく見ているわけではない。テレビでやらないし、見たくても見れない。スポーツニュースをたまに見たり、ネットで結果をチェックするぐらいである。日ハムの大谷が見事に二刀流を物にしつつあるみたいだし、オリックスの金子がとんでもないボールを投げている。どこが優勝し、クライマックスシリーズを勝つのかはわからないが、どこが日本シリーズに来ても、日本シリーズだけは私は毎年楽しみに見ている。


思えば、私が小、中学の時に憧れていた選手はどんどん歳を取り、引退する選手も出てきている。私も歳を取ったなぁとしみじみ感じる。あのイチローもおじさんだし、松坂もベテランと言われ、私が最も阪神ファンだった時に活躍?してた桧山や新庄や和田や坪井といった面々は皆引退してしまった。ロッテの里崎なんてほんの最近まで若手じゃなかったっけ。私の中でのプロ野球の全盛期はやはり小学校や中学校の頃、毎日のようにテレビで見てたあの時代である。松坂と上原がゴールデンルーキーと呼ばれ、阪神はクソ弱かったけど何故か凄く魅力的で。巨人には松井、高橋由伸、清原。広島は前田、江藤、金本。ヤクルトには石井一、古田。横浜には大魔神、石井啄、鈴木尚。中日は川上、立浪、野口。彼らは当時確かに私達のヒーローだった。


だから逆にあの頃から変わらない輝きを放つ選手達には本当に感動させられるし、贔屓してしまう。例えば、中日の山本昌。私が小、中学校の時が全盛期だったと思っていたし、あの頃も決して若手というイメージは無かった。が、なんとまだ現役を続けており、48歳になってもこの前勝利を上げるというにわかに信じられない離れ業をやってのけた。他には、中日の谷繁。谷繁もあの当時からそんなに変わらない成績のまま今もバリバリ現役だ。中日には谷繁を脅かすキャッチャーがずっと出てこなかった。一番凄いと思うのは上原。上原は当時からとんでもない球を投げていたが、今はもっと凄い球を投げ、世界一にまでなった。とてつもないピッチャーだ。



そして、私が日本プロ野球で最も好きでずっと応援し続けているのが、中日の岩瀬仁紀投手だ。ちなみに、私は中日ファンではない。岩瀬は元々好きな選手だったのだけど、誕生日が同じということでいつの間にか親近感が沸き、あまり注目されない中毎年着実に数字を出し、精神的に最も辛いであろう抑えというポジションを極めた渋い風貌に完全に嵌まってしまった。決して感情を表に出さず、とんでもない記録を出しても全く偉ぶらず、一見あまり凄さが見えにくいボールを駆使し、淡々と仕事をこなしていく様は私が理想としている姿そのもの。一言で言うなら仕事人だ。早いストレートが無くても、ランナーは出しても、一年通して見れば岩瀬が最も数字を出している。印象ではなく、数字で結果を出す事に最も重きを置く私にとってはこんなに評価したい選手は他にいない。


岩瀬は私が子供の頃にプロ野球に入り、着実に頭角を現していく。私が中学、高校、大学、社会人と成長する間に、岩瀬は常に最前線で結果を出し続け、今もなおクローザーとして君臨している。その記録は改めて言う必要はないだろう。前人未到の400セーブを始め、岩瀬が叩き出したプロ野球記録は今後二度と破られる事はないのではないかと言われている。毎年怪我なく試合に出続ける強靭な体、何があっても折れない精神力、一見この男のどこにそんな力があるのだろうと見える外見だか、本当にとんでもない人間なのだ。
  

そんな岩瀬の努力や人柄を溺愛していたのが、今の落合博満GMである。最も有名なエピソードはあの日本シリーズだろう。2007年だったかな。日本一が掛かった試合、日本ハムダルビッシュと山井の投げ合い。その年のシーズンほとんど活躍していない山井が神がかり的な投球で8回まで完全試合日本シリーズ完全試合は史上初めて、誰もが山井の完全試合を期待した最終回、なんと当時の落合監督は山井を変え、岩瀬をマウンドに送った。日本一のかかった試合、1対0でリード、前の投手が完全試合で繋いできたというとてつもないプレッシャーの中マウンドにあがった岩瀬はこれまた淡々と3人で抑え、完全試合で終わらせた。それを見たとき、とんでもないクローザーだと思った。

落合監督はその後、メディアで批判されまくったが、あの場面では岩瀬以外ありえないと、なんで3人で終わらせた岩瀬をもっと評価しないのかと、ひたすら岩瀬への絶大な信頼を口にした。その後の落合監督の岩瀬の起用法を見ても、岩瀬への気遣いはや信頼はとても大きなものが見て取れたし、昨年のシーズン前、監督を辞めた落合が中日で最も注目している選手として岩瀬をあげた。


本当にとんでもない選手だが、全然そんな感じを見せない。岩瀬は抑えを任されるようになった時から変わらず、今も悲壮感漂う表情で一切の隙も出さないように怯えながらマウンドにあがっているという。元同僚の落合英二が言う、その悲壮感がなくなりだしたら岩瀬はいよいよ引退だと。


誕生日が同じだけで、今まで積み上げてきた実績は全然違うのだけど、岩瀬投手と私はけっこうキャラは被っていると思う。どんな事があっても、淡々としていようと仕事では強く意識しているし、私も周りから何を誉められても全く調子に乗らない、というか乗れない。自分の能力(ボール)に自信がないし、ちょっとでも隙を見せたら自分なんてすぐに抜かれると思っている。


今年、岩瀬はついに怪我をした。連続50試合登板も途切れた。まだ復帰できていない。現役生活最大の危機だ。しかし、まだ終わってほしくないし、決して実力で通じなくなったわけではないと思う。岩瀬投手はきっとまた不屈の精神で復活してくる。私も岩瀬投手を見習い、毎日コツコツ数字を積み上げていくことでいつか大きな記録を出せるような生き方がしたい。