流星ワゴンに乗って

重松清の流星ワゴンがいつの間にかドラマ化されていて、毎週録画したりして見ている。原作は多分1、2年前に読んでいて、それなりに良い話だったきがするがドラマも良いキャスティングで安心して見ていられる。ただ、5話にして原作の終盤ぐらいまで話が進んでしまっているし、今後はかなりオリジナルな話になっていくのだと思う。


ドラマの話はそのぐらいにして。もし、自分がこの流星ワゴンのように死ぬ前に過去をやり直すチャンスが与えられるならいつ、どの場面に行くだろう。そう考えた時、自分の心に迷うことなく真っ先に1つの時期、1人の人が浮かんでしまう。決してやり直しのできない過去、後悔、それが自分の人生に常につきまとって人生を心から幸せだと感じる事ができなくなった。全ては自分のせいだけど。


人生は本当に分かれ道だらけ。色々な選択をしてその結果今の自分がある。どこの学校にいく、どの部活に入る、どのバイトをする、どこに就職する、努力するしない、勇気を出す出さない、我慢するしない、1つでも違う選択をすれば多くの人と出会う事は無かったし、今の自分は全く違う境遇にいるだろう。今自分が愛媛で暮らしていて、色々な人と出会えたのも奇跡のような確率なのだ。そう思うと当たり前の縁が愛おしく感じる。


大体の選択に後悔は無い。自分の人生素晴らしいとは思わないが、不器用なりに頑張って生きては来た。なんであの時もっとがんばらなかったんだと思う事も実はほとんどない。欲が無いのかもしれないが、自分が唯一自分で誇れるのは結果が出なくとも、不運が続いてもへこたれず忍耐強く謙虚に生きてきた事だけだ。


私が人生でたった1つやり直したいこと、後悔していることは、逆に、何故あの時自分の感情を抑える事、行動を止める事ができなかったのかという後悔だ。やらなくて後悔するのが一般的だが、私はやりすぎて後悔したのだ。


大学の時の失恋。当時の自分は誰かを好きになると真っ直ぐなアプローチしかできず、今思えば面白みの無い男だった。今もそんなに変わらないが、駆け引きが全くできず押しの一手、それが女を落とす一番の方法だと思っていた。まぁ、それは良い。好きと思われて嫌な思いをする女性はいないし、友人としては恐らく相手にとって自分は大事な存在でいれていたと記憶している。


私は卒業した後は仕事で埼玉に引っ越さなければいけなかった。全国転勤がある仕事だが、最初は地元の関西で働けるんじゃないかと思っていたから当時はショックだった。相手とも離れ離れになる。その焦りから私は告白し、失恋した。そのアプローチを後悔はしていない。今思えば失恋して良かったとも思う。遠距離なんて無理だったし、その後の出会いを考えれば。気持ちを伝えた事にも後悔はない。伝えなかったらそれはそれで後悔したはずだ。


問題はその後だった。当時の私はクソ弱い人間だった。新社会人としての不安、埼玉という見知らぬ地で誰も知り合いがいない孤独、それに加えて癒えきらない失恋のショック。それにより、失恋した相手に依存してしまった。相手は自分の事を友人としては本当に信頼してくれていた。そこに甘えてしまったし、まだチャンスがあるんじゃないかと思ってしまったのだ。


仕事にも慣れてきて、知り合いもそれなりにできてきた頃にはより一層相手に依存していた。相手にもそれが伝わったのだろう、初めてはっきりと距離を取られ始め、しまいには連絡を取り合うのは終わりにしようと言われた。私はそこで想像以上のショックを受けてしまい、今では自分でも信じられないぐらい醜く駄々をこねた。当時の自分の心の中はまるで悪魔にでも取り憑かれているようだった。常軌を逸していた。それでも相手は優しく、私からたまに連絡しても返事を1、2通は返してくれていた。


せめてここで自分の悪魔的な弱い心に打ち勝っていれば、私は今ここまで後悔はしていない。あろうことか私はその後も醜く連絡を続けた。しかも、相手に自分を心配させるように事実を大袈裟に伝えたり、不安定な感情丸出しの内容を送り続けた。結果、相手も困り果て、疲れ、ついに着信拒否に。あらゆるソーシャルネットワークもブロックされてしまった。相手にとって自分は本当に最悪な記憶としてだけ残ってしまったのだ。


勿論それ以来相手とは会っていない。共通の知り合いともほぼ会っていない。会うのが怖いのだ。皆どれだけ自分の醜態を知っているのかと思うと。


今自分は大分大人になった。人生何が起きても大体の事では動じないぐらいには。大人になればなる程、自分が当時してしまった事の大きさを後悔してしまう。相手は優しく純粋な人間だった。きっと、私のせいで男に対しトラウマを持っただろうし、人生にマイナスの影響が出てしまっただろう。

人を愛する事と自分の気持ちを押し付ける事は全く違う。それ以来、私は誰かを好きになっても気持ちをかなりセーブし、とにかく相手の幸せだけを考えるようになった。相手の為に自分を殺そうとする癖がついてしまった。例えうまくいかなくなっても、後味の悪い別れ方だけはしないように。それが良いことなのかはわからないが、あの感情の暴走はもう経験したくない。


流星ワゴンでもし過去をやり直せるなら、まだ連絡が繋がる時期に行き、直接会い、とにかく、何度でも謝りたい。許してもらえなくて良い、ただ謝りたい。本当にごめんなさい。と。


私は自分にとって誰より大事だった人間の人生を壊してしまったと自覚している。そんな下らない自分が誰かと結婚したり、出世したり、幸せになるわけにはいかないという気持ちが未だに拭い去れない。チャンスを心から掴めない、後ろめたい。


せめて、相手が幸せに暮らしてくれていれば、多少そんな気持ちもなくなるんだろうけど、確かめようが無い。自分の事をどれだけ恨んでいても、今幸せならば。


あまりに大きい後悔。神様がいるなら、私の人生の分まで彼女を幸せにしてあげて下さい。そして、どんな形でも良いので私の今の後悔の気持ちが伝わりますように。